
海外勤務とメンタルヘルス3
2. 外国語 その1
ここ数年、AIの発達により、パソコンやスマートフォンの翻訳機能が飛躍的に向上しました。
英語のホームページも、自然で洗練された日本語に瞬時に変換でき、インターネットさえあれば世界中の情報を簡単に得られる時代です。
それでは、海外赴任先の言語を学ぶ必要はなくなったのでしょうか?
「確かに、その土地の言葉を話せたら、職場でも生活でも便利だろう。でも、大人になってから新しい言語を学ぶのは難しいし、仕事が忙しくて語学学習に時間を割くのは現実的ではない……。」
そう感じる方もいるかもしれません。
しかし、言葉には単なる「意思疎通」の道具以上の役割があります。その一つが、「社会的機能」。
共通の言語を話すことは、単に情報をやり取りするだけでなく、人と人との信頼関係を築く大切な手段でもあるのです。
たとえば、現地の人と簡単な挨拶を交わすだけでも、相手の表情が和らぐのを感じたことはありませんか?翻訳ツールがどれほど進化しても、「人と人との関係を築く」という点では、やはり自分で話す言葉が大きな意味を持つのです。
そして、外国語を学ぶ過程には、もう一つ大きな価値があります。
それは、「自分自身の視野を広げること」。
言葉を学ぶことは、その国の文化や考え方を学ぶことでもあります。新しい言葉を知ることで、「この国の人はこう考えるのか」「こんな表現があるんだ」と気づく瞬間が増え、自分の価値観が広がっていきます。
もちろん、大人になってからの語学学習は簡単ではありません。
でも、「完璧に話せるようになる」ことを目標にする必要はないのです。
たとえカタコトであったとしても、相手の言葉を使うことで「あなたの文化を尊重しています」「あなたとつながりたい」という気持ちは伝わることでしょう。
渡航者医療センター 松永優子