海外勤務とメンタルヘルス4
2. 外国語 その2
「時々、自分が半人前のように感じるんですよ」
そう話してくれたのは、日本で暮らす外国出身の方でした。どんなに日本語を学んでも、母国語ほど自由に話せず、深く理解できないと感じるのだそうです。
「こんなに流暢に話せるのに、そう思うのですか?」と尋ねると、彼は最近の出来事を話してくれました。

「この前、雨の日にコンビニで買い物をしていたんだけど、店の外に置いた僕の傘を、誰かが持っていこうとしたんだ。その瞬間、とっさに出たのが『ヘイ!』だけで……。その場にいた人たちが一斉に振り向いてしまったよ」
「もし母国だったら、『そこの赤い服の人、それは僕の傘だよ!』って言えたのに、『ヘイ!』しか出てこなかった自分が、まるで子供のように思えてしまってね」
この話を聞いて、私も海外で「母国語なら、もっとうまく伝えられたのに」と悔しく思った経験を思い出しました。言葉は単なる道具ではなく、自己肯定感や安心感にも関わるものなのです。
では、現地の言葉をもっと学べば、この問題は解決するのでしょうか?
実は、外国語でのコミュニケーションに対する不安は、言語習得のレベルと単純には比例しません。
冒頭の彼のように、すでに流暢な人こそ、「それでも言えなかった」ときのショックが大きいこともあります。
「じゃあ、どうすればいいの?」という声が聞こえてきそうですね。
最近、私は心の中でこうつぶやくようにしています。
「だって、外国語だし」
身も蓋もない言い方かもしれませんが、これは紛れもない事実。
外国語なのだから、うまく言えないことがあっても、分からないことがあっても当然なのです。
こう考えると、自分を責めたり、「半人前だ」と感じたりせずに済むようになります。
海外生活で、言葉にちょっと疲れてしまったとき、よかったら試してみてください。
渡航者医療センター 松永優子



